いよいよ来月より短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が始まります。いろいろと要件はありますが、まずは従業員が501人以上の企業からということで、あまり身近に感じていないところが多いようです。ですが、該当する企業、その企業で働く要件に該当しそうな従業員は気が気でないでしょう。

そんな中、政府は9月26日の臨時閣議で、年金を受け取れない人を減らすため、来年10月の支払いから年金の受給資格を得られる加入期間を25年から10年に短縮する法案を決定しました。これにより、初めて基礎年金の受給資格を得る人はおよそ40万人、さらに65歳までに厚生年金を受け取れる人などを含めると、対象者はおよそ64万人に上る見込みです。

年金受給資格の短縮は、消費税率の10%への引き上げと同時に実施する予定でしたが、引き上げ延期で一時実施が不透明になっていました。表向きは「無年金問題は喫緊の課題」がゆえに消費増税に先立って行うようになっていますが、おそらく冒頭の適用拡大の実施が大きく影響しているものと思われます。

従業員501名を超える規模の企業のほとんどが定年後の再雇用制度を設けています。定年再雇用を機に、1週間当たり30時間未満の短時間勤務へと雇用契約を変更して社会保険から外れ、年金を満額受給しながらある程度の給与収入も確保できていた方々が、この適用拡大により再度社会保険に加入せざるを得なくなり、満額の年金を受け取れなくなるケースが考えられます(もちろん要件に該当すればですが、その数は相当なものになることは容易に想像できます)。

64万人が恩恵を受ける一方で、相当数の人達が痛みを伴うことになります(加入しなおした厚生年金の期間が将来の年金に反映されるとは言え…)。なにせ、64万人に掛かる年間予算は650億円。そもそも財源が足りていない状況で、回収手段の裾の尾を広げる政策の実施は当然の結果かもしれません。

これまで受給期間が足りず無年金だった人を救うことはとても大事でそれ自体は反対する気もありませんし、むしろ賛成です。ただ、いつも痛みを伴うのは企業と労働者。この現実になんとも言えない虚無感を覚える今日このごろです。

平成28年9月26日

コンサルティング事業部
城戸